歳時記 / 食の歳時記 6月(水無月)
1年まるごと美味しく豊かに
「食の歳時記」とは・・・
日本人ならば知っておきたい、季節のこと・旬のこと・風習・節句・知恵…など。昔から引き継がれるべき食の風習や、次世代に受け継いでほしい「日本の大切なこと」を旬の食べ物に合わせて月単位でお届けします。
6月ってどんな月? 旬の食べ物・季節のこと
目次
6月に入ると、各地で梅雨入りのニュースが聞こえてきます。
梅雨を代表する花、紫陽花(あじさい)も美しく咲き誇り、季節に彩りを添えてくれます。
そんな6月にまつわる食べ物と暮らしを交えた「食の歳時記」をご紹介します。
まずは6月の主な行事をカレンダーで確認してみましょう。
多二十四節気(にじゅうしせっき)のひとつ「芒種」。
6月6日頃(2020年は6月5日)であり、この日から「夏至(6月21日頃)」までの期間です。
ひとつ前の「小満(しょうまん)」から数えて15日目頃にあたり、暦の上では夏の季節のど真ん中にあたります。
ですが真夏のような暑さはまだなく、梅雨真っ只中の時期です。
「芒種」の「芒」は「のぎ」と読み、稲などの穀物の身の先端にある針状の突起のことになります。
つまり「芒種」は、穂の出る穀物の種まきの季節を表しています。
実際の種まきの季節はもっと前なのですが、農家が忙しくなる時期ということになります。
雑節のひとつ、暦の上での梅雨入りとなる「入梅」。
6月11日頃で、二十四節気「芒種(ぼうしゅ)」から数えて6日目頃になります。
近年の梅雨入りは、関東甲信越で平年6月8日前後、梅雨明けは平年7月21日頃(気象庁調べ)なので、暦と実際にあまり大差ない印象です。
ちなみに雨の季節をなぜ「梅雨」というのでしょう?
「梅の実」が黄色に色づいて旬を迎える頃が「梅雨」の時期となります。
農家にとって、雨の季節を知ることはとても重要なことだったため、「梅の実」の育ち具合で雨の季節の到来をうかがっていたとのこと。
それが「入梅」となり「梅雨」という言葉になったと考えられているそうです。
「入梅鰯」とは、梅雨の季節にとれる「真鰯(まいわし)」のことです。
この時期、鰯は産卵期を迎えるため、脂がのっていて美味しいと言われています。脂ノリノリの鰯は本当に美味しいですよね!
ですが、春先や秋にも脂がのって美味しいという説もあり、いろいろ調べてみると、一概にはいえないという結論にたどり着きました。
なぜなら「真鰯」は群れによって産卵期が異なるそうで、それにともない旬もそれぞれ違うのだとか。
なにはともあれ、DHAやEPAが豊富に含まれている栄養たっぷりの真鰯。
旬の味覚として「入梅鰯」のことをぜひ覚えておいてくださいね。
二十四節気(にじゅうしせっき)のひとつ「夏至」。
6月21日頃(2020年は6月21日)であり、この日から「小暑(7月7日頃)」までの期間です。
一年で昼間が最も長く、夜が最も短い日となります。
逆に昼が一番短い日は「冬至」なのですが、それに比べて「夏至」は4時間以上も昼の時間が長くなります。
「夏至」は太陽の位置が一年で最も高くなるため、太陽が昇って陽が暮れるまでの時間が最も長くなるというわけです。
また、「立夏」と「立秋」のちょうど中間の時期で、夏のはじまりと秋はじまりのど真ん中に位置します。
ですから「夏至」を過ぎると暦の上では本格的な夏到来ということになるのですが、実際は「梅雨」真っ盛りという地域が多いですよね。
農家では田植えや種まきなど、繁忙期が始まります。
沖縄地方ではこのころに梅雨明けを迎えて本格的な夏が訪れます。
「夏至」には田植えの時期を迎えますが、それから11日後に訪れる雑節「半夏生(はんげしょう)」頃には田植えを終える時期になります。
その頃、関西の一部の地域では「タコ」を食べる風習があります。
8本の足とたくさん吸盤を持ち、しっかりと張り付いて離れないという「タコ」の特徴にあやかり、田んぼに植えた苗の根が四方八方に根付くようにとの意味が込められています。
ちょうどその頃「マダコ」も旬を迎えます。
美味しくいただきながらも、「タコ」の足を稲穂にみたてて豊作を願うという面白い風習ですね。
関東では小麦粉を混ぜた「焼き餅」、通称「小麦餅」を食べる風習があるそうです。
こちらも同じく「夏至」に田植えの時期を迎え、雑節「半夏生(はんげしょう)」で田植えを終える時期となります。
関西では「タコ」で豊作を願ったように、関東では収穫した小麦で「焼き餅」を作ってみんなに振る舞い、神様にお供えしているそう。
では、もち米の「焼き餅」ではなく、なぜ小麦の「焼き餅」なのか。
それは、関東では古くから二毛作の農家が多かったため、「夏至」の頃には小麦が収穫されており、たくさん使うことができたからだと言われています。
「夏越しの祓え」をご存知でしょうか?
地域によって「夏越の祓」「夏越し祭り」など呼び名は様々ですが、一般的には6月末に行われるその年の半年間の穢れや厄を落とす行事になります。
行事内容も地域でさまざまですが、日本各地の神社で行われている伝統行事です。
ちょうど一年の半分を終えた時点で、これまでの半年間を振り返りながら無事に過ごせたことに感謝しつつ、穢れや厄を祓います。
そして残りの半年を終えた後、12月末には「年越しの大祓」として同じく厄払いを行います。
この「夏越しの祓」で穢れや厄を落とすため「茅の輪くぐり」を行います。
「茅の輪(ちのわ)」とは、茅葺き屋根で使われる「茅(ちがや)」という草で編んだ輪のこと。
境内につくられた「茅の輪」をくぐることで、穢れを落として心身を清めることができ、新たな気持ちでお盆や新年を迎えることができるとされています。
「茅の輪くぐり」の作法は神社によって様々です。
くぐり方も独特なので、近くの神社で「夏越しの祓」を行っていたら、ぜひ参加してみてくださいね。
京都では「夏越しの祓」に「水無月」という和菓子をいただく習わしがあります。
「水無月」は、氷を模した外郎生地に小豆をのせた三角形のお菓子です。
小豆には「邪気払い」を、三角形の氷は「暑さ払い」という意味があります。
この「水無月」を食べて厄払いをし、暑い夏を乗り切りたいという願いが込められています。
ちなみに、6月は「水無月」といいますよね。
雨がたくさん降る「梅雨」の月なのに、なぜ6月を「水無月」と書くのでしょう。
実は「水無月」の「無」は、連帯助詞にあたるため「の」という意味になります。
つまり、「水無月」は「水の月」ということになるわけです。
なるほど、という美しいおはなしでした。
昔から旬の食材を食べると体に良いといわれていますよね。
最近は季節問わず一年中どんなモノでも手に入るので、旬の食材といってもピンとこない方も多いと思います。
そこで、6月(およそ5月下旬~7月上旬頃)の旬の食材を集めてみました。
たくさんあるので、スーパーでよく目にするメジャーなものを抜粋してお届けします。
5月に引き続き、さやえんどうや空豆などの豆類が豊富で、ビールのお供に欠かせない枝豆も出てきます。
この頃から「夏野菜」と呼ばれる野菜が続々と登場。
きゅうりやゴーヤ、ピーマンやズッキーニなど、果実野菜が美味しい季節です。
また、栄養価の高いつるむらさきやモロヘイヤなどの葉物野菜も旬を迎えます。
魚介6月に旬を迎える魚介類も比較的多くあります。鮎や岩魚、鱚や飛魚などの白身魚や、たこ・いか、アワビやホタテなどの貝類、車海老など、種類豊富なラインナップです。
刺身、煮付け、焼き料理など、美味しく旬をいただける魚介類がたくさん揃います。
旬の野菜や魚をたっぷりたべて、暑い夏を迎えるための力を蓄えましょう。
歳時記/1年まるごと美味しく豊かに「食の歳時記 6月(水無月)」