歳時記 / 食の歳時記 5月(皐月)
1年まるごと美味しく豊かに
「食の歳時記」とは・・・
日本人ならば知っておきたい、季節のこと・旬のこと・風習・節句・知恵…など。昔から引き継がれるべき食の風習や、次世代に受け継いでほしい「日本の大切なこと」を旬の食べ物に合わせて月単位でお届けします。
5月ってどんな月? 旬の食べ物・季節のこと
目次
5月は暦の上で夏を迎える季節ですが、真夏のような暑さもなく、「五月晴れ」という言葉があるように、澄み渡った青空が広がる気候の良い時期です。
「皐月(さつき)」の「皐」という字には「神に捧げる稲」という意味があり、稲作の月として各地で田植えも行われます。
その田植えにちなみ、早苗を植える月ということで「早苗月(さなえづき)」と呼ばれ、それが略されて「さつき」になったという説もあります。
そんな5月にまつわる食べ物と暮らしを交えた「食の歳時記」をご紹介します。
まずは5月の主な行事をカレンダーで確認してみましょう。
雑節のひとつ、「立春」から数えて88日目にあたる「八十八夜」。
平年では5月2日、閏年では5月1日です。
2020年は5月1日にあたります。
「夏も近づく八十八夜〜♪」と歌われているとおり、春から夏に季節が移る節目の日です。
寒暖を繰り返してきた気候が安定する時期なので、農作業に適した時期となります。
また、「八十八」という字が漢字の「米」に似ていることから、苗代の籾まきや茶摘みの目安とされています。
一年間の五穀豊穣を願い、「八十八夜」に神事を行う地域も多くあるそうです。
前述した「夏も近づく八十八夜、のにも山にも若葉が茂る、あれに見えるは茶摘みじゃないか〜♪」と、茶摘みの歌として有名ですよね。
「八十八夜」に積まれた「新茶」は最も上等とされ、栄養価が高く、縁起の良いお茶としいわれています。
その年の最初に新芽を摘んで作られたお茶を「一番茶」といい、一般的には「新茶」と呼ばれています。その後に摘みとられるお茶は「二番茶」「三番茶」と続きます。
ちなみに「番茶」と呼ばれるお茶は、一般的に「二番茶」「三番茶」のことだそうです。
美味しくて縁起の良い「一番茶」「新茶」を飲んで、暑い夏への英気をもらいましょう。
5月5日は「こどもの日」で、「端午の節句」として男の子の成長を祝う日ですよね。
五節句(五節供)のひとつ、3月3日の女の子の節句「桃の節句(上巳の節句)」の次にあたります。
「端午の節句」はもともと中国の風習から流れを受け継いでいます。
その昔の中国では、旧暦の5月には季節的に病気が流行しやすかったそうで、「5月は悪月」と言われていたそう。
そのため、「端午の節句」は疫病や厄を払う意味合いの強い行事になったのだそうです。
また、こどもの日には「鯉のぼり」を飾りますよね。
「端午の節句」に「鯉のぼり」を立てるのは、鯉が立身出世の象徴だからです。
「鯉の滝登り」という言葉がある通り、男の子の成長と出世を願ったシンボルとして飾られています。
「端午の節句」には「菖蒲湯に入る」と良いとされています。
それはなぜなのでしょう?
昔から菖蒲は薬草として重宝されてきました。また、強い香りを放つことから、邪気を払う厄除けの植物としてもよく用いられます。
その菖蒲を入れたお風呂に入ることで、無病息災を願います。
前述のとおり、「端午の節句」は疫病を祓う意味の強い節句です。
「菖蒲湯」で身も心も清めてもらいましょう。
「端午の節句」に欠かせない「柏餅」。
古くから、柏の木には神様が宿るとされています。
また、新芽が出ないと古い葉っぱが落ちないため、「家系が途絶えない」「子孫繁栄」「跡継ぎが絶えない」などの象徴とされています。
柏の木の縁起かつぎから、「端午の節句」に「柏餅」を食べるようになったそうです。
「粽」も「こどもの日」にいただく行事食です。
「粽」は、もち粉やもち米を練って棒状にし、イネ科の植物「チガヤ」の葉または笹の葉で包んで蒸したものです。/p>
5月5日に食べるようになったのは、中国の故事が由来とされ、災いを避けて子供が無事に育つようにという願いが込められています。
「端午の節句」には、「柏餅」と「粽」を食べて「菖蒲湯」につかって、厄払いと無病息災を願いましょう。
二十四節気(にじゅうしせっき)のひとつ「立夏」。
5月6日頃(2020年は5月5日)であり、この日から「小満(5月21日頃)」までの期間です。
ひとつ前の「穀雨(こくう)」から数えて15日目頃にあたり、「春分」と「夏至」のちょうど真ん中の時期にあたります。
暦の上では、いよいよ夏の始まりとなり、この日から「立秋(りっしゅう)」までが「夏」の期間となります。※2020年の「立秋」は8月7日。
農家では本格的な種蒔きや田植えのシーズンとなり、活気にあふれる季節です。
また、梅雨に入る前の気候の良い時なので、衣替えや虫干しなどを行うと良いでしょう。
二十四節気(にじゅうしせっき)のひとつ「小満」。
5月21日頃(2020年の「小満」は5月20日)であり、この日から「芒種(ぼうしゅ)」6月6日までの期間です。
前述の「立夏」から数えて15日目頃にあたり、日に日に夏の気配が色濃くなって来る頃になります。
「小満」の時期は気候も良く、花や虫も元気に躍動し、野山では草木が育つ頃です。
万物が満ち溢れて草木が繁る」とのことから「小満」と言われています。
この頃、バラやユリなどの人気の花が満開を迎えるため、様々な場所で花の催しが行われているのをよく目にしますね。
「走り梅雨(はしりづゆ)」とは、梅雨入り前の少し早い季節に、梅雨を思わせる天候が続くことを言います。
「梅雨の走り」や「迎え梅雨」などと言うこともあります。
本格的な梅雨の季節は一般的に6月に入ってからです。
「小満」は梅雨目前の時期になるため、梅雨のような長雨が続いた際に用いられる言葉になります。
「走り梅雨」は夏の季語として、初夏をうたった俳句などに用いられます。
日本の言葉は本当に風流で美しいですね。
昔から旬の食材を食べると体に良いといわれていますよね。
5月(およそ4月下旬~6月上旬頃)の旬の食材を集めてみました。
たくさんあるので、スーパーでよく目にするメジャーなものを抜粋してお届けします。
初夏の季節、さやえんどうやそらまめなど豆類や山菜の美味しいシーズンになります。とまとやきゃべつ、きゅうりなどの夏野菜も続々登場。
新アスパラガスや新じゃがなど、この時期しか食べられない人気の野菜もいっぱい。豊富な種類がたくさん食べられる、野菜好きにはたまらない季節到来です。
5月の初夏に旬を迎える魚といえば、カツオが有名ですよね。この時期のカツオは初ガツオといって人気です。
また、サワラやイサキ、マスなど、美味しい魚がいっぱい。
その他、とりがいやさざえなどの貝類、ほたるいかやまだこなど、幅広い海の幸に出会える季節です。
旬の野菜や魚をたっぷりたべて、梅雨の季節に体調を崩さないよう体を整えましょう。
歳時記/1年まるごと美味しく豊かに「食の歳時記 5月(皐月)」